騎士戦争
フェンの小さな笑いが響く。
「しかしオーディンはその約束を破った。初めて、人ではなく神を殺してしまう。
神々の我慢の限界だった。同胞殺しに対して怒りを感じない者は、いないだろう。
ある神がついに強行手段にでた。自慢の飼い犬に、オーディンを食べさせたんだ。
…神の飼い犬だ。大きさはそれなりにあり、上あごは天に届くほどであったとされている。
丸呑みにされたオーディンはそれ以来、出て来ていないと言われている。…ロッシュ、その犬の名前、なんだと思う」
急に振られ、ロッシュは返答に困惑した。
「さあ」
「フェンリル、と伝えられている」
「あれ、お前の名前じゃん」
「……仮に私がフェンリルの役割(飼い犬)だとしたら、オーディンに憎悪を持つ役割(飼い主)にあたるのはお前だな」
「なに言ってんだ、神は神、人は人だろ。勝手に神にするなよ。むしろ、」