騎士戦争


彼は動かない。

いくら待ってもうごかなかった。

おかしい。どうして最後の一手を決めない。


この男は『隊長』と今亡き部下に呼ばれていたし、彼の目はまだ本気だ。


どうしたというのだろう。




ざあざあと雨はまだ、降っていた。
自分は虹を見られるだろうか。




不意に男は剣を握りなおした。


来るか、と身構えたが、またしても彼の背が見える。


「俺はあんたの失いたくないものを殺していく。あんたと違って誇りはなく、これはただの殺人になる」


拍子抜けし、おぼろげに感じた。


また、この男は走るのか。


追いかけようとは出来なかった、しなかった。


これで金髪の声が聞けるのは最後だと思った。
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