騎士戦争
死に逝く者たちの讃歌
(一)
全てが灰色だった
雲は未だに晴れずまま、向いているのは東だが太陽は雲に飲まれている
一面の平原は、晴天ならばさぞや緑が美しい場所であろうとも
今、クロスの目に映る平原は不気味だった
緑が濁る世界
嵐の前の静けさのように不気味さしかない
言っておくが、静寂なわけではない
一万
馬に乗る者、歩兵の者
それらの足音が風音を消すが、誰もが『静か』だと感じる空間
一万の兵がいようとも、誰一人として話さないのだ
重々しく、ここ一帯の重力が倍になったよう
大きな戦争になる
――否、盛大な殺戮となる
緊張を超えた切迫感が彼らの呼吸さえも止めようとしていた
いくらこれが初めてではない殺し合いであっても、慣れることなどない
クロスとて同じだった
いつもより、呼吸が少なく手が汗ばむことも自覚している