騎士戦争
(二)
雨が降るな
そうクロスが感じたのは、地平線の彼方に“黒波”が見えた時のことだった
ここら一帯は草原
波など起こるはずがないが、地平線のアレはそうとしか思えなかった
ゆらゆらと動く
そうしてこちらに近づきアレとて、こちらを“黒波”と見ているだろう
人間の視界であの距離から認識出来たのは、無数の影のみだった
だからの黒波
それほどの迫力があり、騒々しい黒はこちらに向かっていた
「っ、兵数も同じか」
黒から銀
甲冑で身を包む彼らを認識したのは、馬が地を蹴る足音が聞こえた時
なかなか途切れない人の波は希望を絶つような事実を伝えていた
「ミカキと戦ったつうから、兵力などないと思ったんだがな……」
独りごちるぐらいに予想外のことに気を張り詰めた