騎士戦争


「ビギナー様、参りましょう。このままでは陣型が崩れます」


「まあ、待っていなさい。もう間もなく、両軍がぶつかるんだ。それを達観するのはなかなかの一興だろう」


遠い地

目を細めなければ見えないそれだが、迫力はよく伝わる


両軍とも覇気があり、走る走る


「さて、今日は何人が死ぬか」


「ビギナー様……!」


痺れを切らした兵士


最早、陣型が崩れきっていた


黙りながら、列を見出す幾多の同士


ただ、進みはしなく列から出ただけのようだが


「お前たち、戻れ!」


「…………」


「戻れというのが分からぬか!」


怒鳴っても列を見出す兵士に変化はない


この幹部たる兵士だけでなく、同じ立場の者たちも戻れと言うが言うことを聞かず


「ビギナー様、兵が」


助け舟をと、男は言った


相変わらずの笑み、向ける視線は遠い地の獣たちへ


「戦争時、前にいる者しか見えなくなるのは君もよく知っているだろう」


「は……?」


「殺すか殺されるかの瀬戸際なんだ、いちいち相手のことなど構ってはいられず。そう、例えば――」


< 27 / 73 >

この作品をシェア

pagetop