騎士戦争


亀裂が入る


自分の血管が一つ切れた感覚を覚え


「生きているからには、まだ生きていたいんだっ!」


男を地に倒した


巨剣ごと男が手を地につける


その眼差しは有り得ないものでも見ているかのよう


チャンスだった、クロスにとっては


立っている自分、倒れた相手


自分の手には剣、相手は無防備


勝敗が決まった


ただし、戦争においての“勝敗”をクロスは果たしていない


とどめを刺さなかった


正しくは、刺せなかっただろうか


何の捻りもない


ただ思っただけ


“殺したくない”、と


今になってまた人を刺す怖さが出てきたわけではなく、本意は自分を“生かして”くれた男に借りを返した話


男の存在が気付かせてくれた己の存在理由


それがあるから死に損ない(クロス)を生かしてしまった


『生きているからには、まだ生きていたい』


死んでないのは生きている証


< 62 / 73 >

この作品をシェア

pagetop