騎士戦争
呼吸も、鼓動も、痛みも
これがある内には死にたくないと思い返した
単純な理由だが、決定的なこと
死ではなく、生に希望を持った一人の男の決断
このままで良い
泥の道を進もうとも、死んでないのならば足は止めない
剣の柄を再度握りしめ、クロスは男に背を向けた
まだ“人はいる”のだ
オリジン兵は残り、自軍の兵だっている
戦争という道に足を置いた今、クロスに後戻りは出来なかった
泥道を進む前
「俺はあんたの失いたくないモノを殺していく。あんたと違って誇りはなく、これはただの殺人になる」
雨に濡れたクロスは背中越しから男に
「けど、誇りない殺人でも意味はあるんだ。自分を守るための防衛だって、その一振りが“正当化”されるこの戦場で――」
男の顔は見えない
ただあるのは頭に焼き付いたあの誉れある姿
そうして――