姫のさがしもの。


ヴーヴーヴーヴー



「・・・誰?」


携帯電話のバイブが
うるさくて目を覚ました。


寝ぼけたまま
電話をとる。


「…もしもし」


「姫夏?

大丈夫??」


電話越しに
心配そうな声をあげているのは
栄太だった。


「うん、寝てた。」


眠りを妨げられて
ちょっぴり不機嫌に
返答する私。


「そっか、ごめん!

症状は?
しんどいの?
病院は?」


質問攻めにする栄太。



「症状は、
吐き気と動悸と
息苦しさと…不安。

しんどいのは
発作の時だけ。
今は平気。

病院は行った。
クスリもらった。」


不機嫌に、
聞かれた質問を
順に返答する。


「吐き気?

風邪かなぁ?

動悸かぁ。
先生はなんて言ってた?」


…あぁ、なんか
面倒くさいなぁ。



「精神的な病気だってさ。

クスリもらったから
大丈夫」


「精神的!?

会社、3日ぐらい
休んだ方がいいなぁ。

ゆっくり寝て
早く治してね」


心配そうに
そう言ってくれる栄太。


だけど、
私は苛々していた。



…半年も治らないのに

3日休んだって
どんなにゆっくり眠ったって

簡単に治んないし。


なんだろう、
苛立ちがおさまらない。


「不安なの?

いつでもメールも電話も
してくれていいからね!

俺に頼ってね」



…俺に頼ってね、か。


宮岸さんも言ってた。


でも、宮岸さんは
頼ればちゃんと
なんとかしてくれる。

栄太は口ばっかりじゃん。


「…うん、わかった。

しんどくなったら
連絡するね。

私、また寝るね。」



結局最後まで不機嫌なまま

私はそう言って
電話を切りたいことを
ほのめかした。



「あ、ごめんね。

じゃあ、ゆっくり
寝るんだよ。

おやすみ、姫夏」


栄太は相変わらず
優しい口調でそう言って、
電話を切った。




…栄太は頼りにならない。
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