姫のさがしもの。
――「今から、会える?」
午前11時。
私は栄太を電話で
呼び出した。
栄太は嬉しそうに
「うん、迎えにいく」
と言って、
そそくさと電話を切った。
私は髪を
キュッと強く縛った。
それは決意の証。
ポツポツと降り始めた雨の中、
傘をさして
家の前で待っていると
暫くして
シルバーの車が現れた。
…栄太だ。
栄太は、車の窓をあけて、
「雨降ってるから
家の中で待ってたら
よかったのに。
また体調崩しちゃうよ?
早く、乗って」
優しく私を気遣う彼。
黙って頷いて
私は助手席に乗り込んだ。
…あれ?
なんだか落ち着かない。
乗り慣れたはずの
助手席なのに
違和感を感じるの。
宮岸さんの愛車の助手席に
すっかり乗り慣れて
しまってるみたい。
栄太の車の方が
ずっと広々として
乗り心地もいいはずなのにね。
全然落ち着かないや。