baby love
触れないで
次の日。
なんとなく憂鬱な気分で、私は教室のドアを静かに開けた。
すると目の前に人がいてぶつかりそうになる。
謝りながらその人を見上げると
「「……あ」」
その人…桜田くんと目が合った。
何故だか、気まずい。
「あ、えとっ」
「……おはよ」
切なそうに、優しそうに笑う桜田くん。
その微笑みに胸がぎゅっと掴まれたように痛んだ。
「…おは、よう」
「ごめん、ちょっとどいてもらってい?出たいんだけど…」
「あっごめ…」
「こちらこそごめんな」
まるで偽者みたいな、作ったみたいな笑顔を貼り付けて桜田くんは私の横を通り過ぎた。
ふわりと香る少しだけ甘い匂い。
桜田くんの後ろを追おうとした視線を伏せて、私は教室に入った。
…桜田くんの態度が、すこしよそよそしい感じがするのは
私の気のせいなのかな?