baby love


泣いている顔を見られないように俯きながらトイレに向かって走る。

きっと美月ちゃんにも心配かけてる。

早く顔を洗ってしまって、泣き顔も洗い流して、いつもと同じ笑顔で戻ろう。

美月ちゃんにはいつも心配ばかりかけてるから……



「あっぶね!」

「えっ」



きゃあっ、と自分にしてはやたらと可愛らしい声…というか言葉が口から漏れた。

人にぶつかってしまったのだ。

衝撃に耐えきれず尻もちをつく。



「あいっ…たあ…!」



今度は色気もくそもない声が漏れた。

一瞬痛みにぶつかった相手を恨みそうになったけど今のは確実に私が悪い。

謝ろうと顔をあげると、ぶつかった男の子が予想外に至近距離にいて思わず身を引いた。

恐る恐る男の子を見上げると男の子は動きをとめる。

そしてぼそりと。



「あ、…泣いて…?」



…そうだった。

私、泣いてたんだ。




 
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