baby love
黒板を見るフリをして、桜田くんの後ろ姿を視界に入れた。
さらさらの茶色い髪の毛。
動くたびにつられて小さく揺れて、愛しくて、触れてみたくなる。
…そんな勇気はないけど。
あんまり見たら周りに気付かれちゃうかな。
そう思って目線を桜田くんの髪の毛から逸らそうとした、時。
突然振り向いた桜田くんと思いっきり目が合って、慌てた私は咄嗟に目をそらした。
ば、ばれた?
見てたのばれちゃったかな…っ?
そんな心臓ばくばくな私の内情を知らない桜田くんは「ね、」と声をかけてきた。
誰に話すのとも変わらない声。
良かった、バレてないみたい…?
「なに?」
震えそうになる声を押さえて聞き返して顔をあげると、こちらを向いた桜田くんと目が合う。
近い。
か、顔アカくなるかも。
「あの問題全然分かんないんだけどさぁ、白木さん分かる?」
「へ?あ、あああの問題?」
何のことだろ?
分からなくてアタフタする私と、私の手元のノートを見た桜田くんはぶっと吹く。