baby love
放課後。
終礼が終わって、みんなが帰ろうと教室を出て行く中。
同じように帰ろうと立ち上がった桜田くんの背中のシャツを、私は掴んで引き止めた。
それに気付いた桜田くんが、少し間を置いて私を振り返る。
「……何?」
冷たい、声だった。
思わずビクリと体が震えて、逃げ出したくなる。
周りには不思議そうに私たちを見る子もいて、それが余計に私を逃げ出したくさせた。
だけど。
……絶対、もう逃げないって決めたから。
「まだ…帰らないで」
「何で」
「話が、あるの」
言葉を詰まらせながら言う私を、桜田くんはジッと見下ろすだけ。
臆病な私の心臓が、嫌に早く動いている。
ゴクリと唾を飲み込んだ時、1人の男子が隣に現われた。