baby love
桜田くんは一瞬だけ苦しげに顔を歪めて、それからはずっと無表情のままだった。
何人かは、異様な雰囲気に気付いた人がいたかもしれない。
結局一言も会話は交わされないまま、私たちは資料室についた。
それでもとりあえずは…第一関門クリア、なのかな。
次が大事なのだけど。
逃げないで……頑張れ、私。
ガチャッと鍵を閉めて振り返ると、桜田くんは無表情のままどこかをぼんやりと見ていた。
「……桜田、くん」
震える声でその名前を呼ぶと、少し間をおいて、ゆっくりとこちらを見る。
だけど何も言わない。
目線だけで、先を促しているようだった。