Self-indulgent.go.go!

▼Ideal & actuality

どこまでも続く青々とした樹木を目の前に、あたしはただ、ぽかんとしていた。


「はじめまして、ええと…。」


その隣で優しげな青年が、あたしに困った様な笑みを向けていた。


「ほら、名前言いな。」

「…あっ、冴島菫、16才です。」


場にそぐわない紫煙を揺らめかせる梓さんに言われ、我に返って自己紹介をした。

青々とした樹木。
清々しいまでの空気。
高い建物などは一切なく、澄み切った空がどこまでも続いている。

梓さんに連れられて赤い軽自動車が向かった先は、果樹園だった。
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