B L A S T

視線が痛い。

プレハブの壁にもたれてしゃがんでいる楓の前を通り過ぎるBLASTのメンバーがちらちらと横目で見てくる。


「なんだあの女」


という人もいれば


「しっ黙ってろ。例の"風神"の女だよ」


と間違った情報を信じる人もいる。

予想していたとおり、その後は悲鳴のような叫び声が聞こえて騒ぎ出す始末。


「なんで"風神"の女がここにいんだよ!」



……うん。ごもっとも。

"風神"の女っていうのはともかく。

なんであたし、またここにいるんだろう。

いくらジュンのためとはいえ、来るなと言われたにも関わらずのこのことやってきて、これじゃあイツキにも怒られるんじゃないか。

ガヤはいいけど、イツキにまで睨まれたら体が持たないかもしれない。

やっぱ帰ろう。

ネックレスのことは明日ジュンに謝ることにしよう。

そう思って立ち上がったときだった。




「楓?」


低い声に誘われるように振り向く。

そこにはイヤフォンを外しながら歩いてくるイツキの姿があった。

学校帰りだろうか。

制服姿に学生鞄を肩に掛けている。
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