B L A S T
イツキが煙草に火を灯した。
部屋中に甘い香りが漂う。
基本的に煙草はあまり好きではないけど、楓はこの香りを気に入っていた。
甘いのにどこか安心できる。
どこの銘柄だろう。
瞼がだんだんと重くなって夢心地に浸っていたら、階段のほうからドタバタと場違いな足音が近づいてきた。
はっと目が覚める。
嫌な予感。
バン、と音を立ててドアが勢いよく開いた。
「おいイツキ!あの女がここに来てるらしいぞ!」
「さっきメンバーに…きい…た……って…」
嫌な予感的中。
入ってきたタクマとカズと目が合った。
「いるし」
「いるし」
楓は苦笑いを見せる。
タクマとカズは体の力が抜けたように、その場に座り込んだ。
「なんだよ。いんならいるって言ってくれや」
「おい女。お前何しに来やがった。お前がここに来るとややこしいことになんだよ。また前みてえに"風神"呼ばれちゃかなわねえからな」
カズの嫌みったらしい口調に楓は眉をしかめる。
「最初にここに連れ出したのはそっちじゃないですか」
「そりゃそうだけどさ」
はあ、と彼らは同時にため息を漏らした。
「こりゃあの男の苦労がしのばれるわ」
「どういう意味ですか」
「将来あの男、尻に引かれるタイプだな」
「ぎゃはは。あの男にかかあ天下かよ」