B L A S T
Act.9

今日もエンジンの音で目が覚める。

カーテンの隙間から、遠くの方でバイクに乗ったガヤの後ろ姿が見えた。

本日は日曜日。

またジュンのところに行くのだろう。

ガヤと口を聞かなくなってもう二週間が過ぎていた。

こんなことは初めてのことでどうしたらいいのかわからない。

今まで喧嘩をしたことはあっても一週間以上も口を聞かないなんてことは一度もなかった。

それもガヤが先に謝ってくれたからだ。

自分に非があってもなくても、喧嘩をした翌日には玄関の外でガヤが何でもない顔をして立っていた。

たった一言。


「ごめん」


その一言が言い出せないあたしは、なんて意地っ張りなんだろう。

これじゃガヤのことをえらそうに言えないと自分が情けなくなった。

悶々とした気持ちを抱えたままベッドから立ち上がる。

身支度をしていたらインターホンが鳴った。

両親は仕事に出かけていて家の中は楓一人。

一瞬ガヤかと思ったけれど、彼はさっき出かけたばかりのはずだ。

誰だろうと玄関を開けると、血相を変えた近所の田中おばちゃんの顔がいきなり至近距離で現れて驚いた。
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