B L A S T
「楓ちゃん。外に変なのがいるんだけどちょっと一緒に来てくれる?」
そう言って強引に楓を外に引っ張り出す。
「さっきからあんたんとこの家ずーっと見張ってんだで。あたしゃ気味悪くてね。もしやあれか。今流行りの"すとーかー"って」
あっ、と楓は叫んだ。
田中おばちゃんが指差した方向にはあの見覚えのある車が停まっていた。
パールホワイトが朝日に反射して眩しい。
恐る恐る近づくと運転席の窓が開いた。
「おはよう、嬢ちゃん」
そう言ってサングラスから目を覗かせたのはタクマ。
助手席でカズの不機嫌そうな顔が見えた。
「ど、どうしたんですか?」
なぜ二人がここにいるのか。
まさか三度目の拉致!?
とっさに車から離れると、タクマがきょとんとした。
「どうしたって嬢ちゃん、これからネックレス取りに行くんだろ。だから迎えにきた」
えっ、と楓は目を見開く。
確かに今日はイツキのところにジュンのネックレスを取りに行こうと思っていた。
「そ、それはそうなんですけどあたし別に迎えに来てくれって頼んでませんよ」
「イツキが迎えに行けって言ったんだよ。いいから早く乗れや」
助手席の方から乱暴な声が飛びかかる。
今日のカズは一段と機嫌が悪い。
とにかく今は言われたとおりにしたほうがいいと悟った楓は鞄を取りに自宅に戻る。
「ちょっと楓ちゃん。ずいぶんと柄の悪そうな子らだけど一人で大丈夫かい?」
「平気です。ああ見えて根は臆病なんですよ」
うろたえる田中おばちゃんをなんとかなだめてから、急いで車に乗り込んだ。