B L A S T

「あっ、じゃねえよ。一体誰のためにこうして迎えに来たと思ってんだよ。クソ眠いのに朝っぱらから叩き起こされてよ。こっちの身にもなってみろよ」


ムカムカッ。

今日のカズはさらに感じ悪い。


「嬢ちゃん無視していいから。こいつ一昨日から寝不足で気が立ってんだ」


とタクマがため息交じりに言った。


「一昨日から寝てないんですか?」

「ああ、ちょっといろいろあってさ。実は一昨日」

「タクマ」


じろり、とイツキが彼を睨みつける。


「…あ、悪りい」


タクマは慌てたようにエンジンをかけた。

窓の景色がゆるやかに流れる。


――ああ、ちょっといろいろあってさ。実は一昨日


一昨日、何があったのだろう。

あたしが聞いちゃいけない話なのだろうか。

好奇心旺盛な楓はその先が気になって気になって仕方がない。


「あ、あの。イツキさん…」


睨まれるのを覚悟で、恐る恐る声をかけると、


「ほらこれ」


目の前にあのネックレスを差し出された。

寂れていた鎖が真新しくなってきれいに繋がっている。


「うわあ、ありがとうございます!純平くんきっと喜びますよ!」


あまりの出来映えに感動した楓は彼に一昨日のことを聞くことをすっかり忘れ、無邪気にはしゃいだ。
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