B L A S T

「ガヤ」


階数表示を黙って見上げるガヤは素知らぬ顔だ。


「ガヤってば」

「…んだよ」


彼は面倒臭そうにしながら振り向いた。


「この前はその…」


楓は口ごもった。

何と言ったらいいのか分からない。

とにかく謝らなきゃ。

そう思ったのに―――。



「謝るんじゃねえぞ」


とガヤに冷たく突き放されてしまった。


「勝手にしろと言ったのはそういうことだ」

「え…」

「あの男と関わってる限りお前はおれの敵だ。だからお前がどうしようが関係ねえ。勝手にしたらいい」


恐らくあの男とはイツキのことだろう。

楓は全身が震えた。

ガヤは無表情で、楓の知っている彼の姿がそこにいない。


「…なんでそんなひどいこと言うの」

「知るかよ」


エレベーターの扉が開く。


「ガヤ」


扉が閉まるまで、ガヤは一度たりとも目を合わせなかった。

どうしてこんなことになるんだろう。

ガヤの考えていることが理解できない。

ガヤがきっとガヤなりにジュンのことを思ってイツキを許せないということは分かる。

でも楓から見れば今のガヤは意固地になっているだけだとしか思えなかった。

その証拠があの言葉だ。


――あの男と関わってる限りお前はおれの敵だ。


イツキと関わるすべての人を避けるなんて意地以外の何でもない。

無茶苦茶だと思った。
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