B L A S T
Act.10





それはゆっくりと忍び寄るようにやってきた。





沈黙が痛い。

カズは黙ってケータイに耳を傾けて、時折相づちを打ったりしている。


「分かった」


やがて、ケータイの電源を切った。

赤信号で車が止まる。


「なんだって?」


タクマがカズに問いかけた。

その暗い表情から決していい話ではないことが伺える。

太いため息を吐くと、カズはゆっくりとイツキに目を向けた。

そして消え入るような声で、


「またメンバーがやられた」


と呟いた。



――ダンッ!


車内が大きく揺れ、楓はびくついた。

タクマがハンドルを殴ったからだ。


「ふざけやがって…!何人やられた」


カズは苦い顔をして三本の指を立てた。


「帰りを狙われたらしい。一人は軽傷。あとの二人は今入院してるってよ」

「…顔を見たのか」


イツキが窓の外に目を向けたまま静かに口を開く。

するとカズは少しためらって答えた。


「ああやっぱりそうだった」
< 119 / 398 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop