B L A S T
Act.2
嫌な予感はしていた。
それは圧倒的な存在感でコンビニエンストアの駐車場の中央に停めていた。
丁寧に磨き上げたパールホワイト。
車はそれほど詳しくはないけれど、ガヤがよく読んでいる雑誌で見たことがあるからたぶん高級車なのだろう。
彼らは楓をじっと見ていた。
まるで獲物が動き出すのを待っているかのような、鋭い視線。
中はスモークガラスで見えないようになっているのに、楓はその視線を痛いほど感じていたのだ。
そして、早くその場を離れようした矢先に事件は起こった。
パールホワイトの車が目の前に止まったと同時に中から人の手が伸びてきて、一瞬にして楓は連れ去られた。
「ッしゃ、大成功!」
「ヒヤヒヤもんだゼ。拉致るってけっこう勇気いるのな」
「さてはお前チビッたな」
「あ?チビッてねえよ」
「弱虫だもんな、お前」
「だからチビッてねえって言ってんだろうが」
チビッてる。
チビッてねえ。
チビッてる
チビッて………
楓は一体何が起きたのか分からないまま呆然とする。
そんな楓をよそに、運転席と助手席の間で彼らは何事もなかった様子で低俗な会話を繰り広げていた。
ってチビッてんのはこっちだ!
我に返って楓は窓の外に目線を移したが、コンビニエンストアはもう見えなくなっていた。
この車はどこへ向かっているのか。
今置かれている状況がなかなか理解できない。
もしかしてこれは…
いやもしかしてなくても
これは…
いわゆる世間でいう―――――
「拉致?」
助手席の男が振り向いた。
金髪で大きな目と尖った顎が印象的だ。
しまった。
そんなつもりはなかったのについ声に出してしまった。