B L A S T
車内が沈黙に包まれる。
――またメンバーがやられた。
メンバーというのはBLASTのことだろうか。
状況が掴めない楓だが、その緊迫とした空気はBLASTに只ならぬことが起きたのだとひしひしと伝わる。
「どうする、イツキ」
タクマが沈黙を破った。
カズと揃ってイツキに目を向ける。
その目は何かを懇願しているようだった。
彼らの意図が分かったのかイツキは小さくため息を吐いた。
「言っただろ。俺はBLASTを抜ける。だから口出す権利はない」
「じゃあ見て見ぬふりしろって言うのかよ!」
カズが声を荒げると、イツキは眉をしかめた。
「違う。お前らが仕切れってことだ」
「そんなこと言ったってよ…」
彼らは困ったように見合わせていた。
プップー、と後ろからクラクションが鳴る。
信号が青になっている。
タクマは車を走らせながら、バックミラー越しに言った。
「なあイツキ。やっぱり考え直してくれ。分かってんだろ。オレらじゃ数が集まらねえ。みんなお前が戻ってくるのを待ってんだ」
「こうしている間にもメンバーがやられるんだぞ。それでもいいのかよ」
イツキは答えようとしない。
口を閉ざしたまま、その視線は変わらず窓の外に向けられている。