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「やっぱりあの噂は本当だったみたいだな」
タクマがぽつり、と呟く。
――あの噂?
「ここ最近、弱小チームが次々と消えて変だとは思ってたんだ。小せえのから吸収して数を増やす。まあ"風神"のやりそうなこった」
カズは煙草をくわえ、火を灯した。
白い煙が立ち上り、たちまち苦い香りが車内に充満する。
「今度はオレらが獲物ってわけか」
「ったくあの男もやることがえげつねえな」
「ちょ、ちょっと待ってください」
楓は聞き捨てならない言葉に身を乗り出した。
あの男とはガヤのことだろう。
まるでガヤが悪者みたいな言い方だ。
「ガヤはそんなこと考えるような人じゃないです。意味もなく人を傷付けて脅すような真似は絶対にしません…!」
楓が睨みつけると、困り果てたように眉を寄せたタクマの顔がバックミラーに映った。
「嬢ちゃん。そうは言っても実際にメンバーが"風神"にやられてんだ。奴らの顔も見てる。上にのし上がるためなら何でもする。それが"風神"のやり方なんだよ」
「…そんな」
信じられなかった。
いくら"風神"のやり方でもガヤがそれに従うとは思えない。
やっぱり何かの間違いだ。
楓は慌ててポケットからケータイを取り出す。
こうしちゃいられない。
早くガヤに止めてもらうように言わないと。
「おい、女」
「あっ」
しかしケータイはカズの手によって取り上げられてしまった。
「余計なことをするんじゃねえ」
「でも」
「女が口出しすんな」
カズの有無を言わせない態度に楓は口を噤む。