B L A S T

いつだったかタクマとカズの言葉を思い出した。


――"風神"は今んとこ関東でトップだからな。数も半端ねえ。


――確実に戦争が起きるな。


"風神"と決闘。

それは考えただけでも恐ろしく大規模な争いになることは間違いなかった。

楓は生唾を飲み込む。


「その争いって避けられないんですか」


恐る恐る訊くと、


「無理だよ」


とタクマがきっぱりと答えた。


「それにこれはオレらBLASTのチャンスでもあんだ」

「…チャンス?」


楓は眉をひそめた。

争いが一体何の得になるというのか。


「狙うはトップってことだ」


とカズが煙草を吹かした。


「奴らがそのつもりならオレらは売られた喧嘩を買う。"風神"を潰して関東のトップの座をBLASTのものにするしかねえ。どのみち頂点にのし上がるためには"風神"は避けて通れねえ道なんだよ」


楓は彼らの言っていることが全く理解できなかった。

仲間が襲われているのにたかが頂点に立つためにこれ以上犠牲を増やそうというのか。

彼らの神経を疑った。


「ただ問題は兵隊だ。"風神"を潰すには今のままだと数が足りない。だからイツキが頼りなんだ。イツキが動けばみんなが動くからな」


そう言ってタクマがイツキに目をやるが、彼は素知らぬ顔だ。


「ちょ、ちょっと待ってください」


楓は慌てふためく。


「メンバーが襲われて悔しい気持ちは分かりますけど、でもだからって喧嘩はよくないと思います!そんなことをしても被害が大きくなるだけで意味ないですよ!」


ぎろり、とカズが鋭い目を向けた。


「お前にとっては意味ねえことでも、オレらにとっちゃ意味のあることなんだよ。すべてはBLASTのためだ」
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