B L A S T
「おいカズ!落ち着け」
タクマの止める声も聞かずに、カズは助手席から身を乗り出した。
今にも殴られそうな勢いだ。
それでも楓は怯まず、彼を睨みつけた。
「だったらてめえがやれや!」
とカズが声を荒げた。
「人の上に立つってことがどんなに大変か、てめえが身を以て体験してみろや!」
楓は呆れかえった。
総理大臣じゃあるまいし。
ばかばかしい。
「いいですよ」
一斉に全員の視線が楓に向けられる。
「あたしやります、総長」
長い沈黙。
「お前本気で言ってるのかよ」
自分が言い出したくせにカズは信じられないとでも言うように瞬きを繰り返していた。
「その決闘日っていつですか」
「えっ、あっ一応、再来週の日曜日って決めてるけど」
タクマが慌てて答える。
「じゃあそれまでに人を集めればいいんですよね。そんなの楽勝ですよ」
カズの大きな目が怪しく光る。
「…女。言ったな。オレはちゃんと聞いたぞ」
「はい」
「おいイツキ」
カズは楓の隣に目を向けた。
その視線を追うとくっくっ、と肩を揺らして笑っているイツキの姿があった。
「笑ってんじゃねえよ。オレは本気だ」
「あ、あたしだって本気ですよ」
楓も負けじとカズを睨みつける。