B L A S T
「ちょっとカズさん」
彼らの前に身を乗り出したのはテツだ。
「冗談はほどほどにしてくださいよ。今はそんな状況じゃないことカズさんも知ってますよね」
普段は気弱なテツが珍しく厳しい口調だった。
きっと"風神"にメンバーが襲われたことに苛立っているのだろう。
テツに便乗して彼らが声を荒げる。
「おい女!てめえ"風神"の女だってな」
「ブッ殺すってあの男に伝えとけ!」
「そんなにBLAST欲しけりゃ女が俺らとタイマンはってみっか?」
「ぎゃはは、やっちまえ!」
次々と飛び交う、ドスの利いた声。
恐怖のあまり、額に汗が滲み出る。
怖い。
もう家に帰りたい。
すると、彼らの中の一人が言った。
「そうだ。あの女を人質にしようぜ」
えっ、と耳を疑った。
「それ賛成!」
とっさにカズに目を向けて助けを求める。
しかしカズはわざとらしく口笛を吹いて素知らぬ顔だ。
その目はこの人たちをまとめられるならまとめてみろ、と言っているようだった。
何度も言うけどやっぱりこの人感じ悪い!
「きゃっ!」
突然、舞台に勢いよく上がってきた男が腕を掴んできた。
「人質確保!」
と叫んだかと思えば、男はいきなり楓を舞台から引きずりおろそうとする。
「ちょっとやめてよ!」
楓は必死に抵抗した。
あまりの強い力に腕が千切れそうだ。