B L A S T

暴走族の総長になると宣言してから丸二日。

早いものでギブアップ寸前。


「なんでみんな出ないのよ…」


連絡が取れないメンバーと片っ端から電話をかけてみたもののコール音が続くだけで一向に繋がる気配がない。

やっと繋がったと思っても留守電でがっくりと肩を落とす。

時計の針はすでに夜中の十時を差している。

この分厚い冊子を受け取ってから五時間が立っているのに、連絡が取れたメンバーは0だ。

こんな調子では到底百人余りの人が集まるわけがない。

無理に決まってる。

大体あたしが暴走族の総長をやるってこと自体が無謀だ。

いや、そもそもあたしが言い出したことなんだけれど。

これを自業自得と言うのだろうか。

途方に暮れて分厚い冊子を眺めていたら、


「あのぅ…」


玄関のほうから声がした。


「もしオレでよかったら手伝うッスよ」


そう言って恐る恐るリビングに入ってきたのはテツだった。

お気に入りなのか今日も豹柄のスパッツを履いている。


「さっきイツキさんから電話があって大体の事情聞きました。楓さんずいぶんムチャなこと言いましたッスね」


テツが欠けた歯を見せる。

きっとあたしのことをバカな女だと思っているんだろう。

なんだか恥ずかしい。


「メンバーと連絡とれたッスか?」


楓が首を横に振ると、テツは吐息をついた。


「やっぱりイツキさんがあんなこと言ったからみんな避けてんスね」

「あんなこと?」

「BLASTの解散宣言スよ。突然だったッスからみんなショック受けてました。連絡とれないのはきっとイツキさんに解散宣言を撤回してほしくてストしてるんじゃないスか」

「そうなんだ…」
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