B L A S T

あんな冷たい目をしたイツキは初めてだった。

初めて会ったときよりも彼を怖いと思った。

でも怖い気持ち以上に、あたしは寂しくも思った。

彼の中にある閉ざされた心。

あたしが開こうとすると彼はそれを拒む。


――あんたには関係ない。


そう言ってあたしを突き放す。

それがすごく、ものすごく寂しかった。


「楓さん。やっぱりなにかあったでしょ」


ジュンが顔を覗き込んできた。

彼を心配させたくない。

そう思った楓はううん、と首を振る。

するとジュンは頬を膨らませて言った。


「うそつき。僕知ってるんだから」

「えっ」

「楓さん。一兄に代わってBLASTの総長になったんだってね」

「どうしてそれを…」


楓の身を案じてか、イツキがメンバー全員に口止めしてくれたはずなのに。


「そりゃああのBLASTだもん。ファンの僕にとったらそんな情報仕入れるのはちょろいもんだよ」


そう言ってジュンは戸棚にあったノートパソコンの画面を見せた。

なにやらマウスでサイトのURLをクリックすると"BLAST"という題が出て、そこでチャットらしき文面が繰り広げられていた。


≪BLAST最高≫
≪イツキ命☆≫
≪派手に暴れてくれ≫
≪大好き≫


その中で驚いたのは


≪女がリーダーになった≫


ということが書かれてあったことだ。
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