B L A S T
はあ、とガヤが呆れたように吐息をつく。
「後先考えねえところは相変わらずだな」
さすが小さいときからずっと一緒にいるだけあってよく分かってる。
ごめんなさい、ともう一度謝った。
「勝手にしろって言ったのはおれだ。謝るんじゃねえよ」
エレベーターのボタンが点滅する。
「どうしてその気になったのか知らねえけど」
ガヤは中へ入るとすぐに扉を閉めようとせず、そのまま楓をじっと見つめた。
「お前、もしかしてあの男のこと…」
間が空く。
言いにくいことなのか、なにやら頭をがしがしと掻いている。
「やっぱなんでもねえ」
「えっ何よ」
楓は眉をひそめる。
さっきのジュンといい、ガヤといい、二人して何を言いたいのだろうか。
「なんでもねえってんだろ。とにかく気をつけろ。おれが言いてえことはそれだけだ」
「あっガヤ、ちょっと。ちょっと待って!」
閉まろうとする扉を慌ててこじ開けた。
「あたしも聞きたいことがあるの」
「…なんだ」
「あ、あのね」
どうやって話を切り出そうか。
脳裏に真っ赤に染まったプレハブの部屋とあの鬼の顔が思い浮かぶ。
――同志が消えると思え。
BLASTのメンバーを襲ったのはガヤの仕業じゃない。
楓は今もそう信じていた。
「やっぱりなんでもない」
えへへ、と笑うとガヤは眉をしかめた。
「なんだそれ」
そう言って八重歯を少し覗かせる。
久しぶりに見る笑顔だった。