B L A S T

「やっぱり彬兄呼んで迎えに来てもらえるように頼もうか?」

「ううんいい。大丈夫。一人で帰れるから」

「でも」

「大丈夫だってば。家なんてすぐだし」

「じゃあ僕のケータイ番号教えるから何かあったら絶対に連絡してね」

「うん、ありがと」


楓はジュンからメモを受け取ってエレベーターに乗る。

扉の隙間からジュンの姿が見えなくなると、壁にもたれかかりため息を吐いた。

ジュンに心配させたくないと思ってああ言ったもののやっぱり怖い。

ポケットの中から新品のケータイを取り出し、一件しか登録されていない番号を表示する。

そのケータイは一週間前、タクマやカズに緊急用として持たされたものだった。

彼ら曰わく総長としての義務らしい。

この番号がどこに繋がるか分からない。

でもこのまま一人で帰るのは心細い。

総長になって最初はどこに行くにもタクマやカズが車で迎えに来てくれたりしてたけど、あの目立つ車で来られるとなんだか気が引けてしまい、結局断ってしまった。

今思えば、断らなければよかったと悔やむ。

さらに最悪なことに外に出ると雨が降っていた。

天気予報は晴れだといっていたのに。

コンクリートを叩きつける水しぶきは止む気配はない。

楓は先ほどのケータイを手にとった。

やっぱりタクマやカズに迎えに来てもらおう。

それで、もしカズが来たら謝ろう。

あたしはBLASTの総長なんかやるべきじゃなかった。

そもそもあたしがやること自体が間違ってる。

今日限りで辞退しようと決めた。
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