B L A S T
次に扉が開くまで、楓はその時を待つ。
そしてその時は刻々とやってきた。
「女、メシだ」
――来た!
またコンビニの袋に入ったお弁当が無造作に放り投げられる。
楓はすぐさま床下に寝転び、それから「痛い!」と叫んだ。
「痛い痛い!」
何事かと思ったのか、扉の隙間から骸骨男が顔を出している。
パンダナを外したその顔はハイエナに似ていた。
「おい。どうした」
「お、お腹が痛くて」
もちろん、嘘。
骸骨男の気を引いて、その隙に逃げようという企みだ。
「トイレならそこにあるだろうが」
「そうじゃなくて。…さっきのお弁当があたったみたいで」
「はあ?お赤飯がか」
「う、うん。あたし小豆のアレルギーだったみたい」
「小豆のアレルギーだあ?そんなのあんのかよ」
我ながら下手な嘘だなと思う。
骸骨男は怪訝そうに眉をしかめていた。
「と、とにかく病院行かないとあたし死んじゃうかも」
痛い痛い、と楓はさらに背中を丸めた。
やがて骸骨男が近づいてくる気配がする。
ちらりと見やると扉は開いたままだ。
――よし。今がチャンス!