B L A S T

「それにしてもあの男、どっかで見たことがあんだよな」


赤信号になると、タクマがハンドルに頭を乗せてうなった。


「あの男って?」

「ハイエナにちょっと似てるあの男だよ。オレどうもあの顔に見覚えがあんだよね」

「気のせいなんじゃねえのか。"crusher"と関わったことは一度もねえはずだろ」

「そうなんだけどよ」


それからもタクマは唸り続け、やがて赤信号が青に変わったときだった。


「あ―――――!」


いきなり車内が大きく揺れ、危うく窓に頭をぶつけそうになった。


「思い出した!あの男だ!あの男に違いねえ!」

「おい落ち着け、タクマ」


珍しくタクマが興奮している。

一体どうしたのだろう。


「ジュンだよ!」


なぜかタクマの口からジュンの名前が出た。


「はあ?ジュンがどうかしたのかよ」

「ジュンをやった奴らの中にあいつもいたんだよ!」


――えっ。


とたんにイツキが目色を変え、身を乗り出す。


「…WAVEのメンバーか」


ああ、とタクマは頷いた。


「あの顔は絶対そうだ。確かあの男、ジュンに手は出してねえってことですぐ釈放されたはずだ。まさか"crusher"のリーダーやってたとはな。その男が嬢ちゃんをさらったのは偶然か必然か。偶然にしちゃうまく出来すぎてると思わねえか」
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