B L A S T

――イツキにかかれば電話一本ですぐ済むことなんだけどよ。


あたしはこの時まで知らなかった。

というより半信半疑だったのかもしれない。

彼のたった一言で人が動くなんて思いもしなかったから。

だけど目の前に広がるこの光景は紛れもない事実で、あたしの予想を見事に裏切った。

バイクのランプでライトアップされた舞台。

目を開いていられないほどあまりにも眩しい。

無数の光の中で一人立っている男は彼、

イツキ。


「ざっとこんなもんか」


そう呟いて煙草の煙を吹かす彼の背中はどこか貫禄が漂う。

いまだに信じられなかった。

左を見ても、人。
右を見ても、人。


――数を集めろ。今夜中にだ。


あの一言だけで、深夜の体育館に集まったその数はゆうに千を超えていた。


「すごい…」


連絡の取れなかったメンバーも来ているらしく、彼らを集めようとしたあたしの努力は一体なんだったんだろうかと思ってしまう。

でもそれだけ彼らはイツキの一言を待っていたんだろう。

メンバー全員が笑顔に満ちあふれている。
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