B L A S T
「イツキさん、準備できましたス」
舞台袖のほうからテツがOKサインを出すと、イツキは下に置いてあったマイクを手にした。
「みんな、聞け」
低い声が響く。
それまで騒がしかった体育館の中が静まり返った。
「知ってる奴もいると思うが、この前"風神"にうちのメンバーが襲われた」
そう言って彼が指差した先には頭や首を包帯で巻いた男が二人立っていた。
聞くところによると背後から金属バッドで殴られたそうだ。
非情極まりない。
「俺は汚いことする奴は絶対許さねえ。それでだ」
イツキは静かに切り出した。
「来週の日曜、深夜0時。"風神"とケリをつけようと思っている」
体育館の中がざわざわと騒がしくなる。
彼らの表情に戸惑いの色が浮かんでいた。
そして一人の男が手を上げた。
「あの総…、イツキさん。それってオレらも行かなきゃいけないんすか」
その口調はどこか弱々しい。
イツキは少し間を空けてから答えた。
「これは命令じゃない。どうするかはお前らの自由だ」
また、ざわめき。
彼らの後ろで様子を見守っていたカズが苛ついたように怒鳴った。
「お前ら何が気に入らねえんだ。言いてえことがあんならちゃんと言えや」
彼らは黙って顔を見合わせているだけで口を開こうとしない。
楓はてっきり"風神"に対して怯えているのかと思ったが、彼らの様子を見ているとどうもそうじゃないと感じた。
「イツキさん」
やがて、見かねたようにテツが舞台に出てきた。