B L A S T
ロケット花火が夜空を飛んだ。
何十本も並べられた筒から光の雨が降り注ぐ。
彼らはその筒を持って、校庭をバイクで走り回っていた。
その中にタクマやカズも交じっていて、その顔は楽しそうだ。
「きれい…」
表彰台の上で花火を眺めていると、イツキが隣に腰掛けた。
「やる」
「あ、ありがとうございます」
差し出されたミルクティーを受け取る。
その際、指先が少し触れてどきりとした。
「大丈夫だったか」
「えっ」
「あいつらに何もされなかったか」
あいつらとは"crusher"のことを言ってるのだろう。
「はい。何も」
そうか、とイツキは軽く笑みを浮かべた。
ロケット花火がまた一つ夜空で散る。
「花火きれいですね」
「ああ」
ちらりと隣に目をやると、花火の光で照らされたイツキの表情はどこか穏やかだ。
あの、と楓は切り出した。
「本当にこれでよかったんですか?」
黒々とした瞳と目が合った。
表彰台の下ではテツがBLASTの復活祝いと称して買ってきた大量の花火が置かれてある。
タクマやカズもメンバー全員がBLASTの復活を心から喜んでいる様子だ。
楓はイツキが気がかりだった。
本当にこれでよかったのかとどこか喜べない自分がいる。
彼はきっと何か理由があって解散を決めたはずだと思うから。