B L A S T
Act.16
その日の夜は、静かだった。
月は雲に隠れて、風一つ吹かない。
まるで嵐が来る前のような静けさだ。
夜の11時に家を出ると、停まっていたパールホワイトの車に乗り込んだ。
とたんに鮮やかな竜が目の前に飛び込む。
それはイツキが特攻服を羽織っているところだった。
洗練された白地に、イツキのタトゥーと同じ昇り竜が縫いつけてある。
彼のその姿を実際に見るのは初めてのことで、あまりのお似合いについ見とれてしまった。
「楓も着てみるか」
えっ、と楓は目を見開いた。
イツキはくっくっと肩を揺らした。
「冗談だよ」
楓は自分が特攻服を着ているところを想像してみた。
…絶対、似合わないと思った。
運転席のタクマと助手席のカズも赤い特攻服を身にまとっている。
カズは髪型を今時リーゼントに固めていて、一昔前の暴走族を思い出させた。
「おい、女。今日は男と男の対決だ。女は手出しすんじゃねえぞ」
考え方も一昔前だ。