B L A S T

いよいよ今日、"風神"と会うときがやってきた。

自分が来るところじゃないと分かっていたが、イツキに無理を言って、車の中で大人しくするならという条件付きで渋々ながらも承諾してもらった。

きっとあたしが心配しているのをイツキは気付いてたと思う。

もちろんBLASTのこともそうだし、何よりガヤが気がかりだった。

あたしは今でもガヤのことを信じている。

だからこそこの目で確かめたかった。

二十分ほどして車は河川敷に出ると、そこではすでにBLASTのメンバーが集まっていた。

彼らの手には金属バットや凶器になるものがそれぞれ握りしめられており、その中でテツもサングラスを外して戦闘態勢に入っていた。

切羽詰まった空気をひしひしと感じ、思わず生唾を飲み込む。


「じゃあ行ってくる」


ロックの開く音がした。

あの、と楓はイツキを呼び止める。


「気をつけてください」


そう言うとイツキは親指を立ててみせた。

颯爽と歩くその後ろ姿は見る人が振り返る。

中には歓喜の雄叫びをあげている人もいた。

正直言って今でも暴走族の考えることは理解できないでいる。

この闘いが何の意味があるのかも。

仲間を傷付けられたとはいえ、暴力沙汰を起こすことはよくないと思う。

でもイツキを先頭に仲間のために立ち向かう彼らを見ていると何も言えなかった。


――どうかみんなが怪我しませんように。


楓はスモークガラスから外の様子を見守り、彼らの無事を祈った。
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