B L A S T
腕時計の針が一日を終える。
その時だった。
川の向こうから人影が見えた。
暗闇でよく見えないけれど、その出で立ちからセイジだと分かった。
セイジが右手を上げる。
するとセイジを先頭に複数の男がぞろぞろとやってきた。
その数がBLASTを超えていたことに不安を覚える。
やっぱり関東一だけあってその存在は圧倒的だった。
川を挟んでセイジとイツキが向かい合う。
なにやら話を交わしていた。
車の中にいるからどんな内容かも分からない。
するとポケットの中でケータイが震え、楓は急いで通話ボタンを押した。
≪――…さしぶりだな≫
イツキの声だ。
窓の外に目をやると、テツがこっちに向かってVサインを送っているのが見えた。
楓もVサインを向ける。
実は昨日、前もってテツにケータイを繋げて様子が分かるようにしてくれとイツキに内緒で頼んでおいたのだ。
もちろん気の優しいテツは快く承諾してくれた。
≪あの男はどうした≫
とイツキは言った。
あの男とはたぶんガヤのことだろう。
そういえばガヤの姿が見当たらない。
≪総長ならアジトで待機中ですよ。何せこの人数だ。自分が来るまでもないと悟ったんでしょう≫
≪待機中だあ?お前ふざけてんじゃねえぞ!≫
この怒鳴り声はカズだ。
≪今すぐあの男を連れ出してこいや!≫
≪カズ。下がれ≫
≪でもイツキ≫
≪いいから下がれ≫
セイジに掴みかかろうとしていたカズはイツキの手によって遮られ、渋々と後ろに下がっていた。
楓は奇妙な違和感を抱いた。
――拳を交わすからこそ意味があんだよ。
あの喧嘩好きのガヤがこの場に立ち会わないのはおかしい。
なんだか変だ。