B L A S T
≪やっぱりそういうことか≫
イツキは小さく吐息をついた。
それからタクマを呼ぶと何やら耳打ちをする。
タクマは頷いて、その場をバイクで走り去った。
どうしたんだろう。
タクマはどこに行ったんだろうか。
時間は刻々と過ぎていく。
≪そろそろ始めませんか。サツに嗅ぎつけられますよ≫
≪いや、もう少し待ってくれ≫
さっきからイツキとセイジはこの会話の繰り返しで、いつまでたっても争いが始まる気配はなかった。
"風神"のメンバーが苛ついているのが目に見える。
イツキは黙って煙草を吹かしているだけで、その目はまっすぐセイジを捕らえていた。
一体彼は何を考えているのだろう。
しばらくしてタクマが戻ってきた。
楓はあっと驚く。
タクマを追うようにして走ってきた二台目のバイクにガヤの姿があったからだ。
とたんに"風神"のメンバーの間でどよめきが起こる。
ガヤはバイクから降りてすぐさまイツキに詰め寄った。
≪どういうことだ、てめえ≫
イツキの胸倉を強引に掴んだ。
≪おれに黙ってうちのメンバー呼び出すたあどういうことかって聞いてんだよ≫
≪何のことだ。呼び出したのはそっちだろ≫
≪あ?≫
≪俺らはお前らの誘いにのったまでだ。メンバーがやられて黙って見てるわけにはいかないからな≫
そう言ってイツキはケータイの画面をガヤに見せつけた。
≪んだ、これは≫
≪とぼけんなよ。お前が仕向けたんだろ≫
≪"決闘を申し込む。断れば同志が消えると思え"だあ?ふざけんなよ。おれがこんな汚え真似するかよ!≫
どうやらイツキが見せたのは真っ赤に染められたプレハブの部屋らしかった。
≪やっぱりお前は何も知らないんだな≫
イツキはセイジに目を向ける。
楓はその時、確信した。
すべての元凶はこの人にあることに。