B L A S T
≪"嘘"だよ。俺は嘘つく奴が一番嫌いなんだ≫
イツキは手についた血を振り払う。
両手で鼻を押さえてひいひいと泣き叫ぶシゲは見ていて痛々しい。
≪もう一度聞く≫
イツキは言った。
≪本当にそれだけか≫
≪…イ…ジさんです≫
シゲは叫んだ。
≪セイジさんに命令されましたっ!ジュンをやれって…。ジュンを殺せってセイジさんがそう言ったからっ≫
雲の隙間から、月の光が差し込む。
セイジは煙草の灰を川へと落とし、
≪バレちゃいましたか≫
と小さく呟いた。
その細い目はひどく冷たく、表情に全く感情が感じられない。
≪どうしてジュンをやった≫
イツキは訊いた。
≪なんでだったかな。昔のことだからよく思い出せないけど。まあ強いて言えば…≫
セイジは口元をにやつかせて言った。
≪BLASTを慕う奴が嫌いだったからですよ≫
≪セイジ、てめえ!≫
風を切る音がした。
ガヤが雄叫びを上げながらセイジに殴りかかる。
しかしセイジはそれを振り払うように避け、ガヤは地面に倒れた。
≪総長。僕がどうして総長にトップの座を譲ったか分かりますか≫
≪……≫
≪駒です≫
≪駒?≫
≪社会でもどこでも何か揉め事を起こすと、トップがすべての責任を背負うことは当たり前ですよね。でも僕はまだ捕まりたくない。だから総長には影武者として利用させてもらいました≫
≪…最低だな、てめえ≫
≪何とでも言ってください。この世界に卑怯なんて言葉は通用しないんですから≫
おい、とセイジは"風神"のメンバーに声を投げかける。
≪やれ≫
雄叫びがあがった。