B L A S T

≪それで嬢ちゃんはいつになったらこっち来るの?≫


突然タクマが話を変えてきた。


≪メンバーも嬢ちゃんに会いたがってるよ。もしかしてこの前の争いでビビっちゃった?≫

「えっ」


楓は戸惑った。

違います、とすぐに否定できなかった。

実際にあの日から彼らに会うことを拒んでいる自分がいるのだから。

ガヤやタクマとカズが時々家まで来たけれど居留守を使った。


≪もしかして当たり?≫

「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ」

≪ただ?≫

「ちょっと恥ずかしいっていうか。顔を合わせるのが申し訳ないっていうか」

≪なんでそう思うの?≫

「だって…」


ああ、とタクマが思い出したように言った。


≪セイジを殴ったことなら気にしなくていいよ。というか今や伝説として語り継がれてるし。嬢ちゃんはやっぱり"無敵の楓ちゃん"だってね≫

「う…」


あの時の自分はどうかしてた。

思い出すだけでも恥ずかしい。

でも楓はセイジを殴ったことは後悔していない。

あれだけ暴力はだめだと言っておきながら矛盾していると思うけれど、ガヤやジュンのことを考えたらそうせざるにはいられなかった。

セイジが捕まってざまあみろっていう気持ちだ。

だからそのことは気にしていない。

ただあたしが気になっているのは―――――。
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