B L A S T
後部座席に乗り込むと甘い香りがした。
その横ではイツキが煙草を吹かしている。
久しぶりに見るその顔は何枚ものの絆創膏が張られていた。
たぶん"風神"と争ったときにできたものだろう。
見ていて痛々しい。
「その傷、大丈夫ですか?」
ああ、とイツキは小さく頷く。
「大丈夫だ」
窓の外で景色が流れる。
今日は助手席が空いている。
楓は運転席のタクマに訊いた。
「カズさんはどうしたんですか?」
「ああ、カズは今巡回中」
「巡回?」
楓が首を傾げていると、イツキは言った。
「今日はパレードだから」
「パレード…?」
「着いたら分かる」
「はあ」
なんだろう。
パレードといえばテーマパークの行進を思い出すけれど、あれとは違うのだろうか。
「嬢ちゃん。そのパレードにジュンも来るよ」
えっ、と楓はタクマに目をやった。