B L A S T
「あの、」
黒々とした瞳と目が合う。
楓は俯きがちに呟いた。
「あたしはBLASTと会えてよかったと思います」
「……」
「そりゃ怖いこともありましたけど、でもそれだけじゃないっていうか。みんなのイツキさんに対する忠誠心とか、イツキさんが実はメンバーのことを大事に思ってるとことか。とにかく純平くんがBLASTのことを好きになった気持ちがよく分かりました。だからあたし、BLASTに会えて本当によかったって思ってます」
イツキは黙って聞いていた。
それからしばらくして、彼は言った。
「ありがとう」
えっ、と楓は顔を上げる。
イツキは微笑んだ。
「ジュンをあんな目に合わせたのは止めなかった俺の責任だ。でもだからと言って俺はもう自分を責めてはいない。俺らと関わる以上こういうことはよくある日常茶飯事だからな。ジュンもそのことはよく分かってるはずだ」
それを聞いて楓は安心した。
そもそも悪いのはセイジのほうだ。
やっぱりあの時殴ってよかったと思う。
「それより…」
やがて携帯皿に灰が落ちる。
イツキは続けて言った。
「俺が心配なのは楓だよ」
「えっあたしがですか?」
楓は眉をひそめる。
「あの時、内心は冷や冷やだった」
そう言ってイツキは煙草を口に加えたまま背もたれに体を預ける。
「俺らの世界は甘くない。たまたま無事だったからよかったようなものの一歩間違えればその顔に傷が付いたかもしれねえんだ。だからもうあんな無茶な事はしないでほしい」
その厳しい口調に、首をすくめた。
恐らくイツキが怒っているのはあたしがセイジを殴ったことに対してだろう。
確かに自分のやったことは軽率だったかもしれない。
ごめんなさい、と楓はひとまず謝った。