B L A S T
「分かったならいい」
イツキはため息を吐くと、窓の外に視線を移した。
呆れられちゃったかな。
楓はごくり、と生唾を飲み込んだ。
「あの、イツキさん」
「ん」
「あたしのこと嫌いになりました?」
イツキが振り向く。
目を大きく見開いていた。
「やっぱりあんなの女の子のすることじゃないですよね。でもガヤや純平くんのこと考えたら体が先に動いてしまって…。あたしのこと野蛮な女だなって思いました?」
「いや…」
「正直に言ってください。あたしのことはしたない女だと思いましたよね?」
間が空いた。
イツキは少し俯いて考える仕草をしてみせると、今度はくっくっと肩を揺らした。
「イツキさん?」
顔を覗き込む。
イツキの口元に笑みが浮かんでいた。
「な、なんで笑ってるんですか!あたしは本気で聞いてるんですよ」
楓が顔を真っ赤にしていると、イツキは声を上げてさらに笑った。
顔をくしゃくしゃにして笑う様はやっぱり幼い少年のようだ。
「いや、必死だなと思って」
「だって…」
楓は俯いた。
実は今まで彼らに会うことを拒んでいた理由はこのことだったりする。
――だって好きな人に幻滅されたら嫌だから。
でもそんなこと言えるはずがなかった。
「もういいです」
ふてくされてそっぽを向いていると、また笑い声。
「楓は何度見ても飽きないな」
それは誉めているのだろうか。
でも少なくとも嫌われてはいなさそうだ。
なんとなく子供扱いされている気もするけど、イツキが楽しそうにしていると許してしまう自分がいる。
かなり重傷だ。
そう思いながら自然と顔がほころんだ。