B L A S T
「ううん。どうして?」
「僕ね、こう見えてけっこう頭良かったりするんだよ。中学の時は学年首位ばっかり狙ってたな」
楓は以前、テツの店に貼り出されていた写真を思い出した。
イツキやガヤと一緒に写っていたジュンは偏差値が高いことで有名な某私立中学の制服を着ていた。
あの時、ジュンがどうして暴走族と関わるようになったのか不思議でならなかったことを覚えている。
「へえ、すごいね」
「でしょ。惚れた?」
「うん惚れた」
へへ、とジュンが白い歯を見せる。
それからぽつりと呟くように言った。
「でも正直、限界だったんだ」
「えっ…」
「学校でも勉強、家に帰っても勉強。初めは親に認めてもらいたい一心で頑張ってたんだけどだんだん僕はそんな毎日に嫌気が差すようになったんだ。毎日がつまらない。ずっとそう思ってた」
「そう、だったんだ…」
「でもね、僕はその時出逢ったんだよ」
「何に?」
「BLASTに!」
とたんにジュンの目がきらきらと輝き出し、それから興奮気味に話を続けた。
「塾の帰りだったかな。僕がかつあげされてるところを一兄に助けてもらったんだ。暴走族って聞いたときはびっくりした。暴走族だからって悪い人ばかりじゃないんだなって知ったよ。それから僕はBLASTのところに入り浸るようになってある日、初めてパレードに連れてってもらったんだ」
ジュンは窓の外に目を移した。
「すごく感動した。もちろん悪いことだっていうことは分かってるんだけどみんなが暴走族をやる理由が分かった気がした。それまでの僕は真っ直ぐ走ることだけしか知らなかったけど、自由に、僕の行きたい方向に走ってもいいんだって、そう思えたんだ」
「自由に…」
「そう。BLASTは自由なんだ。それが僕がBLASTに入りたいと思った理由」
そう言って顔をくしゃくしゃにして笑うジュンは心から楽しそうだ。