B L A S T

「だから僕、BLASTに会ったこと後悔してないよ」


えっ、と思わずジュンを直視した。

ジュンはイツキに目を向けて言った。


「どんなにひどい目に合っても僕はずっとBLASTを追いかけるからね」


楓はその時、ジュンの意図が分かった気がした。

ジュンは知ってるんだ。


――BLASTを慕う奴が嫌いだったからですよ。


セイジのことも、何もかも。



「…ジュン。誰に聞いた」


ガヤが目を丸くしていると、ジュンはにひひ、と怪し気な笑みを浮かべる。


「僕の情報網甘く見ないでよ」


車内に沈黙が漂う。

楓はちらりとイツキに目をやった。

鼓動が高鳴る。

イツキは笑っていた。

目を細めて、嬉しそうに。

やがて、彼は冗談交じりに言った。


「追いかけてもBLASTには入れねえぞ」

「ええー、一兄のケチ」


ジュンがふくれっ面をしてみせると車内は笑い声に包まれた。

楓は自分のことを恥ずかしく思った。


――どんなにひどい目に合っても僕はずっとBLASTを追いかけるからね。


そんな風に言えるジュンは本当にBLASTのことが好きなんだと分かる。

それなのに今のあたしはなんだろうか。

イツキのたった一言でうじうじと悩んでる。

本当に好きなのなら、例え傷付いても立ち向かうべきなのに。

ちゃんと相手と向かい合わなきゃいけないのに。


「タ、タクマさん」


逃げてちゃ、だめなんだ。


「あたしやっぱりパレード見たいです」
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