B L A S T
「あら、図星」
「違…!」
「顔赤いわよ」
江原先生がからかうように言った。
全身の体温が一気に熱くなるのを感じながら、楓は江原先生を睨みつける。
「そんな顔しないの。いいじゃないの。別に恥ずかしいことじゃないんだから。恋をすることは悪くないわよ」
「…そうなんですけど」
「それで例の男の子?」
「えっ」
「ほら幼なじみの、いつも送り迎えしてくれる男の子」
バイクを運転する仕草をしてみせる江原先生に、ガヤの姿が思い浮かんで楓は慌てて手を振った。
「違いますよ、あんなの!ただの幼なじみだし、そんな風に考えたこと一度もありません」
「そうなの。てっきり付き合ってるものかと思ってたわ」
「まさか。好きな人は他にいますから」
「あ、やっぱり恋してるんじゃない」
「う…」
なんかハメられた気がする。
楓は一気にコーヒーを飲み干した。
「それでどんな男の子なの?」
目をきらきらと輝かせながらずいずいとすり寄ってくる江原先生はまるで恋愛報道のリポーターみたいだ。
「どんな男の子って…」
脳裏にイツキの姿が浮かんだ。
「一言で言うと優しい人です。自分のことより相手のことを考えるような人で…」
「優しい人ね。うちの娘と一緒一緒」
「ああ、そういえば江原先生って娘さんが一人いるんでしたよね」
「ちょうどあなたと同じ年頃。娘も今恋してるらしくてね、優しさを絵に描いたような人なんだって」
「へえ」