B L A S T
「最近一緒にいるところ時々見るよ。彼女なのかな」
ジュンの言葉に胸がちくり、と痛む。
風に乗って聞こえてくる二人の笑い声。
今まで見た中で一番楽しそうに笑うイツキは女の子を優しい瞳で見つめていた。
やっぱりそうなんだ。
イツキには彼女がいたんだ。
それもあんな可愛らしい女の子が。
一番予想したくなかったことが当たってしまった。
よく考えたらあたしはイツキという人をよく知らない。
ただBLASTの総長というだけで、彼のことを知った気になっていた。
なんかばかみたいだ。
結局あたし一人だけが勝手に舞い上がっていたということ。
突っ走るどころか、一歩も動き出せずにこんな結果になってしまった。
「…あたしトイレに行ってくるね」
もうそれ以上現実を目の当たりしたくない。
楓は逃げるようにその場を離れた。